さようなら、赤塚不二夫

こんにちは、坂上です。これから一週間くらいブログを更新できなくなると思います。なるべく更新するようにはしますが、五行くらいで終わってしまうかもしれません。

ずっと部屋に篭って作業をしているせいかタバコの本数がまずいことになっています。赤塚不二夫さんが亡くなられたことで多少死を身近に感じるようになっています。やばいやばいと言われながら絶対に死にそうにない人がポックリ逝ってしまわれると死がまた一つ距離を縮めてくる思いがしますね。

テレビでなかにし礼さんが「天才バカボン」のことを「サザエさん的な世界観」と言ってまして、聴いているとどうもこれは赤塚さん自身も口にしていたことらしいです。確かに序盤はほのぼのしてますよね、どの赤塚作品も。ただ、バカボンにしてもおそ松くんにしても、後半のエグさは半端じゃないです。そして僕にとっての赤塚作品の根源的イメージはむしろこの気味の悪い空間の中にあるのです。

バカボンの後半ではサクサク人が死にます。バカボンのところに後輩が尋ねてくるという基本図式は同じなのですが、巻を増すごとにブラックユーモア成分の度合いが加速していきます。「枝豆中毒の男なのだ」という話。
枝豆を食べ出すととまらなくなって仕事ができないという男がバカボンのパパに相談しにくるんですね。で、話をしてても食べ続けるからパパが隠してしまう、そうすると後輩は怒ってパパを殴ります。「枝豆をどこへやった!! 枝豆をだせっ」。パパは枝豆をトイレの中に捨てるんですが、後輩はうんこまみれになってもそれを探して食べ続ける(当然トイレは汲み取り式です)。ここでパパが「よーし!!」と思い立ちます。枝豆を大きなカマの中でゆで始めるのです。「もっと枝豆を食べたかったらこのカマの中で食べなさい!!」。後輩はカマの中に飛び込み、死にます。「これでやっとやめられたのだ!!」。その日の食卓での会話。ママ「この枝豆ダシがきいててふしぎな味ね!!」バカボン「パパも食べなよ!!」。これに対してパパが以下のように答えて話は終わります。「わしはいらないのだ!! ウフフフなんにも知らないで!!」。後輩が死んだり、娘の処女喪失の話が出たりと、後期バカボンは落ち着いて読んでいられません。

追悼の意をこめてもう一つ。おそ松くんに「飛び出したドケツ」という話があります。あ、現物を読んだのがだいぶ前なので微妙にタイトルや内容間違ってたりするかもしれません、確か講談社KC版の33巻くらいに入ってる作品だったと思うのですが。
おそ松くんという作品、実は後半になるとおそ松たちはほとんど出てこなくなります。たまに出ても脇役として現れるだけで、主人公は完全にイヤミです。トト子ちゃんもチビ太もほぼ姿を現しません(チビ太はたまに出るんですが、本来の役割ではない形で、例えばバーにたまたまいたお客さんのような形で出演するだけです)。この「飛び出したドケツ」もイヤミが主人公のお話です。あ、やば、ここまで書いたけど話の始まりが思い出せない……まあいいや。とりあえず、ある日イヤミのオッパイが服を破いて飛び出します(その様子は大ゴマで描かれます)。「神様!! ミーがなにをしたって言うザンス?」。困ったイヤミはオッパイが飛び出たことがバレないよう物凄い厚着をして外に出ます。で、その様子をおそ松たちに見つかってしまうんですね、彼らはどうにかしてイヤミの服を脱がそうとする。しかしイヤミは意地でも厚着を解かない。そんなことをしているうちにガソリンがイヤミにかかって、そこに火がついてしまうんですね。「ガソリンが引火した!! 服を脱いで逃げろイヤミ!!」。それでもイヤミは服を脱がない、それどころか念仏を唱え始めます。やがて炎が消え、素っ裸になったイヤミの裸体がさらされます、「もはやこれまでザンス」と覚悟するイヤミ。ところがいつのまにかオッパイは元に戻っている。そこでイヤミは安心するんですが、今度はケツが飛び出すんですね。そこでイヤミが一言、「ケツ論が出たザンス」。彼は飛び出したケツに人を乗せてタクシー業を始めます。最後のコマでは楽しそうにチビ太とハタ坊を乗せて走るイヤミの姿が描かれます。ストーリーとしてはそんなにエグくありません。しかし、オッパイが飛び出したときとガソリンが引火した時の大ゴマの使い方は子供心にゾっとしました。後期の赤塚作品は絵柄もだいぶ変わっています、もちろんエグい方向へ。

これで誰か一人でもバカボンやおそ松くんを買いに行ってくれたらいいなあ。本日18本目のタバコを吸いながらそんなことを思います。