やさぐれる俺リターンズ for 筑波批評社

こんにちは、坂上です。タイトルが示す内容を直接知りたい方はしばらく飛ばしちゃって大丈夫です。
今日ようやっと批評が一本書きあがりました、明日推敲してデザイナーさんの方に送ってしまうつもりです。Plateauには僕と山田くんとを合わせて七本の批評を載せます(変更可能性有)。で、僕は四本書くわけですが、そのうち一番堅苦しいやつを書き終えました。これで少しは気分も楽になるかと。細かいことは同人誌が出来上がってから一つずつ順番に語っていきますが、とりあえずさっき書き上げた批評の中で扱った作品をリストアップしておきます。
イタリアの作家であるイタロ・カルヴィーノから『見えない都市』と『冬の夜ひとりの旅人が』の二本。日本のシナリオライターである田中ロミオから『CROSS†CHANNEL』。フランスの作家レーモン・クノーから『文体練習』。この四つを使って読者をめぐる一つの概念について分析したわけです。その概念がどういうものかについてはまた報告します。とりあえず時間があればこの四つのテクストを呼んでおいてもらえるととっつきやすくなるはずです。勿論読んでない人にも伝わるような言説を展開していますが、やっぱり直に知っておいてもらえるほうが入りこみやすいと思うので。
なんかこう、四つ並べると世界各国から無理やり集めてきました的な臭いが漂いますね。でもまあ、なにかしら重要な概念を文学作品から取り出そうとするならば、そこでは国やジャンルを超えて作品に接していかざるを得ないはずなので。今までもこのブログで何回か似たようなことを書いた気もしますが、僕は文芸批評の役割というのは結局のところ新しい概念を抽出する、あるいは創り出すことにあると思っています。この辺りのモヤモヤ感が社会批評なんかと大きく異なってくる点ですね。社会批評ならば現実の社会の見通しを良くしたり、問題を解決したりといったある種わかりやすい目的があると思うのですが、文芸批評で新しい概念を創るとか言ってもかなりファジーな響きが残ってしまうわけです。ついでに言えば、2008年現在の状況において、文芸批評の明確な目的を批評家間で共有することはかなり難しい。少なくとも強引に「これこそが文芸批評のあるべき形だ!!」みたいな宣言を行ってもおそらくはモノローグ的な空虚に回収されてしまうでしょう。ただ、抽象的な言い方であることを承知で語りますが、新しい概念を作り出すということは文学の魅力を引き出すということと連結しているはずです。そしてこの「文学の魅力を引き出す」という考えが批評家に共有されていればあとはなんとかなるんじゃないかなーと楽観的に考えるわけですが、これすらも大半の批評家は認識していない、あるいは認識していても文章からそれが伝わってこない。こうなると僕に出来るのは自分の理想とする批評を書いて、この概念が散種されるよう願うことだけなんですね。世知辛いですね。 

さて、そんな感じで全体像も見えてきたPlateauなわけだが、世界はあまり俺たちに優しくはないのだった。社会への梯子を外した形での文芸批評を行うチームは自分たちだけだろうと俺は考えていたわけだが、マジ優しくないタッグが本日誕生してしまった。筑波批評社である。
今日の俺は珍しく体調がよかった、そのうちブログとかでも使うかもしんないし写真でもとっとくかなーと、グラサンをかけて(素顔をさらすのはいまだに慣れない)携帯を手にとったりしてた。この時はまだ心に余裕があった。

筑波批評社のラジオが開始されたのは深夜0時を回るあたりである。筑波批評社ゼロアカ道場破りに参戦するわけだが、彼らは六人で構成されているため代表二名を選出しなければならなかった。その選考過程が丸々流されているとなればこれは見ないわけにはいかなかったのだ。社会学とか分析哲学に強い人たちというのが俺の筑波批評社に対するイメージだった。なので、どういうタッグが組まれても自分たちとジャンル的に被ることはないだろうなーと思っていたのだが、それは果てしなくヌルヌルな思考なのだった。マジ、sakstyleさんが「ジャンル横断的にフィクションを語る」とか言い出した時には死にたくなった。問題意識も相当俺と重なっていて危険度察知アンテナはビンビンにおっ勃っていた。その後Muichkineさんのターンが訪れる。使おうとしている作品が俺と言葉通りの意味で被っていた。再び死にたくなった。全体の討議が終わり、投票タイムとなる。その隙に俺は知り合いに短いメールを送信していた、「サックとムイッシュのコンビだけはマジ勘弁」。そして結果発表、一位から発表していくというなかなかに内臓に悪い方式だ。当然ここでは一位と二位の人間がゼロアカに出てくることになる。俺は他の人たちを軽視していたわけでは決してない、ただ、sakstyleさんとMuichkineさんが出てきた場合、相当近い土俵でやりあうことになるので、ワクワク以上に胃がキリキリするというだけの話である。
そして一位の名前が読み上げられる……Muichkine




俺の胃液、軽く逆流を開始する。二位はklovさんとsakstyleさんが同票だったため、決選投票が行われることになった。俺のコメカミの先っちょがミシミシと音を立て始める。
結果、二位……sakstyle




この瞬間、ジャンル的な意味での俺たちの優位性、消失する、おそらくは虚数空間の彼方へと、逃げ去る。二人のプレゼンを聞いている限り、かなり問題意識ははっきりしていた。おそらく大幅にブレることはないだろう。つまり、ガチでやりあうしかないわけである。昨日の友はすでに敵。俺は先日行われた飲み会でklovさんの甘いマスクに惑わされ、周囲の友人にも「筑波批評社マジいけてるよ!!」とか吹聴してしまったが、本当は初対面でいきなり相手のケツの穴に親指を挿し込むくらいの覚悟で行くべきだったのだ。しかしヘタレな俺に真正面から喧嘩を吹っ掛ける度胸などありはしないのである。お二方、お互い良い批評を書きましょう。俺から筑波の二人に投げられる言葉はそれだけなのだ。やさぐれざるを得ない。